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2025.9.29

役員の死亡退職金と弔慰(ちょうい)金について

シリーズ退職金を考える(3)

退職金と弔慰金

遺族と会社のために知っておきたい税務と実務のポイント

法人の役員が突然亡くなられた場合、遺族には「死亡退職金」や「弔慰(ちょうい)金」が支払われることがあります。これらの支払いは相続税の課税や株主総会決議の必要性、弔慰金との区別など、さまざまな論点が含まれています。

この記事では、実務上よくご相談をいただく「死亡退職金」と「弔慰金」の違いや税金の取扱い、そして相続税の非課税枠や支払法人側が押さえておきたいポイントについてわかりやすく解説します。

1.死亡退職金とは?

死亡退職金とは、役員が在任中に亡くなった場合に、その功労に報いる形で遺族に支払われる退職金のことです。通常の退職とは異なり、本人が請求することはできませんが、生前に予定されていた退職金や功労金が、遺族に支払われることになります。

死亡退職金に対する税金ですが、相続税の課税対象となるため、所得税は課税されません。

金額は「功績倍率法」で算定します。

 詳しくはコチラ→いくら払う?退職金額の決め方と「功績倍率」の考え方

支給額は、一般的に以下の計算式で算出されます。

最終の月額報酬 × 勤続年数 × 功績倍率

2.死亡退職金と相続税

民法上では遺産に該当しない死亡退職金ですが、税務上は「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。

ただし、非課税枠が設けられているのがポイントです。

非課税限度額:500万円 × 法定相続人の数

この範囲内であれば、相続税はかかりません。

例:法定相続人が3人の場合 → 500万円 × 3 = 1,500万円までは非課税

支給が3年超の場合は所得税の対象に

死亡から3年を超えて支給された退職金は、相続税ではなく所得税の対象となりますが、実務上はほとんどが3年以内に確定されるため、多くの場合相続税の対象になります。

3.弔慰金とは?

弔慰金は、亡くなられた役員に対する「お悔やみの気持ち」として支給されるものです。

死亡退職金とは異なり、慰労や感謝を込めた金銭であるため、相続税の計算上は原則非課税となります。

非課税となる限度額

業務上の死亡 → 月額報酬 × 36ヶ月
業務外の死亡 → 月額報酬 × 6ヶ月

これを超える部分は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。

4.税務調査で否認されないために-退職金と弔慰金の明確な区別

死亡退職金と弔慰金が混在していると、税務調査で弔慰金が否認され全額が相続税の対象になることもあります。

実務上、次のような工夫が有効です。

・社内規程の整備:弔慰金の支給基準を明文化しておく
・株主総会の決議を分ける:退職金と弔慰金を別々に決議
・会計処理の区別:退職金は「退職給与」、弔慰金は「福利厚生費」とするなど
・振込手続の分離:それぞれ別の振込で処理する

これらを実行することで、意図しない課税を防ぐことができます。

5.死亡退職金の資金準備には生命保険を活用

役員の死亡退職金は、高額になることが多く、数千万円にのぼることもあります。

突然の支出に備えて、法人契約の生命保険を活用するのが一般的です。

特に「長期平準定期保険」や「逓増定期保険」などは、退職金の準備に適しており、支払った保険料の一部を損金処理できる商品もあります。

退職金の支出と保険金の受け取りが会計上うまく相殺されれば、法人税の節税対策にもつながります。

よくあるQ&A

Q.死亡退職金って、普通の退職金とどう違うのですか?

A.死亡退職金とは、役員の方が在任中に亡くなったときに遺族に支払われるお金です。

通常の「退職時に本人が受け取る退職金」とは異なり、故人の功績に報いるために、遺族に支払われるものです。

Q.死亡退職金の金額は、どうやって計算されるのですか?

A.一般的には、以下の式で計算されます。

最終月額報酬 × 在籍年数 × 功績倍率

「功績倍率」は、その方の役職や会社への貢献度、他社との比較などをもとに決められます。

ただし、高すぎると税務調査で否認されるリスクがあるため、適正額であることを資料で説明できるようにしておくことが大切です。また、支給には株主総会の決議が必要です。

Q.死亡退職金は法人税の損金にできますか?

A.できます。

ただし、株主総会で具体的な金額が決まった事業年度の損金に算入することになります。取締役会で内定しただけでは損金にできません。

Q.税務調査で弔慰金と退職金を一緒に見られたりしませんか?

A.ここが実務で最も重要なポイントです。

弔慰金が高額すぎると、税務署から「これは退職金の一部ではないですか?」と指摘されることがあります。そのため、退職金と弔慰金を明確に区別する工夫が必要です。

Q.もし会社に退職金規程がなかったら、どうすれば?

A.その場合は、株主総会の決議が必要です。

役員退職金の支給は、会社法361条により「株主総会の決議事項」とされているからです。

また役員が同時に従業員だった場合、その部分に限って就業規則に基づいて支給できることもあります。

Q.役員が死亡して保険金を受け取りました。この死亡保険金を全額遺族に支給して良いですか?

A.適正上限額があります。

死亡退職金に備える目的で保険に加入している場合、死亡保険金を全額遺族に支給しても良いと思われがちですが、
死亡退職金として適正な額(Q2を参照)を超えると支給額の一部が損金扱いにならないことがあります。

6.まとめ

役員が亡くなられた場合に支給される死亡退職金や弔慰金は、故人の功績をたたえると同時に、遺族の生活を支える重要な資金です。

しかし、税務上の取り扱いが複雑であるため、「知らなかった」では済まされないリスクも含んでいます。

 ・死亡退職金には「非課税枠」がある
 ・弔慰金は非課税だが、金額によっては課税対象に
 ・明確な社内規程と処理で、トラブルを防止
 ・生命保険の活用で資金と節税対策を同時に実現

このような内容を理解し、事前に準備をしておくことが、経営者とご家族を守る第一歩です。

「もしものとき」に備えて事前にできることを一緒に考えてみませんか?

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2025.9.4

退職金にかかる税金、自分に合った受け取り方は?

シリーズ退職金を考える(2)

退職金イメージ

はじめに

長年の勤務を終えて迎える退職。そこでの退職金の受け取り方は、これからの生活を支える大切なお金です。でも、忘れてはいけないのが「税金」のこと。

この記事では、退職金にかかる税金の仕組みや、退職金の受け取り方によって異なる課税方法、そして役員退職金や小規模企業共済金についても、わかりやすくお伝えしていきます。

退職金の受け取り方は3つのパターン

主な退職金の受け取り方には、次の3つがあります。

  1. 一時金として一括で受け取る
  2. 年金のように分割して受け取る
  3. 一時金と年金を組み合わせて受け取る

確定確定拠出年金の場合も、一時金、年金、あるいは一時金と年金の併用が選択可能です。

それぞれ税金のかかり方が異なるので、自分のライフプランに合わせた選択が大切です。

一時金で受け取るとどうなる?(退職所得)

退職金を一括で受け取る場合は「退職所得」として課税されます。これは給与などと合算しない「分離課税」となっていて、税負担が軽くなるような仕組みになっています。

計算式は以下のとおりです

(退職金の金額 − 退職所得控除額) × 1/2
「退職所得控除額」は勤続年数によって決まります。
・20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
・20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)

たとえば勤続38年なら控除額は2,060万円。退職金がこの金額以下であれば、税金はかかりません。

退職金の受け取り方気をつけたいこと

・「退職所得の受給に関する申告書」を退職金受け取り前に会社へ提出しないと、20.42%で税金が引かれてしまい、確定申告が必要になることがあります。

・勤続5年以下の役員などは「特定役員退職手当等」に該当し、「1/2」の計算が使えないケースがあります。

メリット

・比較的税金が少なくて済む

・大きな資金をまとめて受け取れるので、住宅ローン返済やリフォームなどにも使いやすい

デメリット

・大金を一度に手にすることで、投資などで失敗をするリスクあり

年金として受け取るとどうなる?(雑所得)

次に退職金の受け取り方において年金のように分けて受け取る場合は、「雑所得」として課税されます。公的年金などと同様に「公的年金等控除」が適用されます。

メリット

・一時金より受取総額が多くなる

・使いすぎを防ぎやすい

・毎年の生活資金として計画的に使える

・公的年金をまだ受け取っていない時期に役立つ

デメリット

・毎年課税されるので、他の収入と合わせると税負担が増える可能性あり

・所得が増えることで健康保険料や医療費の自己負担割合に影響が出るケースあり

退職金の受け取り方:ハイブリッド型一時金+年金

会社によっては退職金の一部を一時金として、残りを年金として受け取ることもできます。それぞれ別の課税ルールが適用されるので、ライフプランに応じて調整が可能です。

役員退職金のポイント

役員としての退職金は、「最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率」で計算されることが多いです。適正な金額であれば法人の経費(損金)として認められます。

ただし、金額が高すぎると税務署に否認される可能性も。事前に退職金規程を整えておくと安心です。

詳しくはコチラ⇒退職金シリーズ(1)役員退職金を支払うに時に知っておきたい税務と実務のポイント

また、現役のまま亡くなった場合の退職金は、相続税の対象になります。

小規模企業共済金を受け取るときの注意点

次に、小規模企業共済の共済金も受け取り方によって税金の扱いが変わります。

・一括受け取り:退職所得

・分割受け取り:雑所得(年金と同じ扱い)

この制度は、掛金が全額所得控除の対象になるなど、現役時代からの節税メリットが大きいのも魅力です。

退職金の受け取り方を決めるときに考えたいこと

税金だけでなく次のようなことも合わせて考えてみましょう。

・退職後の生活費や大きな支出の予定

・公的年金や再就職による収入の有無

・健康状態や医療費への備え

・一時金での運用を自分で行う予定があるかどうか

令和8年以降に予定されている税制改正とは?

令和8年(2026年)からは次のような変更が予定されています。

① 確定拠出年金との重複期間の調整

確定拠出年金(企業型DC・iDeCoなど)の老齢一時金と会社からの退職金は、どちらを先に受け取るかによって退職所得控除の計算が異なります。法人の勤続年数と確定拠出年金の加入期間が重複している期間については、退職所得控除額の調整計算が必要となります。

・退職金の受け取りが先の場合 → 退職金と老齢一時金の受け取り期間を20年より長く空けると、退職金、老齢一時金の両方から満額の退職所得控除額をマイナスすることができます。

・老齢一時金の受け取りが先の場合 → 老齢一時金と退職金の受け取り期間を5年より長く空けると、老齢一時金、退職金の両方から満額の退職所得控除額をマイナスすることができます。
ただし、令和8年1月1日以後に老齢一時金を受け取ると、改正により空白期間が10年必要となります。
例えば、令和7年中に老齢一時金を受け取り、5年後に退職金を受け取ると退職所得控除が有効に使え税のメリットがあります。

② 特別徴収票の提出対象が広がります

これまで一部の役員などに限られていた「退職所得の特別徴収票」の提出義務が、すべての退職者へ拡大されます。企業側の手間は増えますが、税務の透明性が高まります。

詳しくはコチラ⇒国税庁「令和7年4月源泉所得税の改正のあらまし(令和7年4月25日)」

よくあるQ&A

Q. 退職金を一時金で受け取ったほうが得ですか?

A. 一時金の方が退職所得控除や1/2課税が使えるため税負担は軽くなる傾向がありますが、使い過ぎのリスクや将来の資金計画次第では年金受け取りの方が合っている場合もあります。

Q. 「退職所得の受給に関する申告書」は必ず提出しないといけませんか?

A. 提出しない場合、税率20.42%で源泉徴収されるため、損になるケースが多くあります。

提出することで控除適用後の税額で源泉徴収され、確定申告が不要になる可能性が高いです。

Q. 確定拠出年金を受け取っていても、退職金の控除は使えますか?

 A. 基本的には使えます

しかし、令和8年からは9年以内に受け取ったDCの一時金と退職金の勤続期間が重なると、その部分について控除額が調整される予定です。

Q. 年金で受け取った場合の注意点は?

 A. 毎年雑所得として課税されるため、所得が増えて保険料負担が上がるケースがあります。

また、公的年金等控除の範囲内であっても、他の収入と合算される点に注意が必要です。

Q. 退職金が相続税の対象になることはありますか?

A. 被相続人(退職者)が現職中に亡くなった場合、その退職金を遺族が受け取ると原則として相続税の対象になります。

迷ったときは専門家に相談を

退職金の受け取り方、税金に関しての方法は、人それぞれの状況によって異なります。迷ったときは、税理士など専門家のアドバイスを受けてみましょう。大切な老後資金のことだからこそ、納得のいく選択をしていただきたいです。

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